貿易システムの選定ポイント

貿易業務に求められる機能は?

輸入や輸出を行っている企業は、円貨しか入力できない市販パッケージソフトでは業務管理が難しいため、貿易管理に特化したソフトウェアを導入するケースが多くなります。一般的な貿易システムは、Invoice・Packing Listなどの輸出帳票やPurchase Orderなどの輸入帳票の出力に加えて、仕入原価を正確に把握するための輸入諸掛按分機能や関税計算機能などをそなえています。

貿易システムを導入する際のチェックポイントとしては、国内取引を含めた管理機能が充実しているかどうかを確認しておくことをお勧めします。例えば、国内向けの締日請求に対応しているか、商品単価が荷姿や数量別に柔軟に設定できるかなどがあげられます。また、貿易取引は、国内取引よりも複雑になりやすいため、取引実績などをシステムの固定帳票だけで分析することが難しい場合もあります。分析性やデータの加工性という観点で、データ出力機能、つまりエクセルとの親和性が高いかどうかも重要なチェックポイントになります。

さらに中国など海外の委託工場に原材料を送り、委託加工を行って再輸入するような取引を行っている企業では、委託加工工場へに発送した原材料(預託在庫)の原価に加工賃や関税を付加して製品在庫に変換する加工品振替機能が必要になってきます。自社固有の業務形態に合った機能があるかどうか、カスタマイズの余地があるかどうかなどもチェックしておくべきポイントです。

経営管理面で考慮すべきことは?

経営管理という観点では、輸出入・国内取引が統合管理されているかどうかという点と為替の扱いが重要です。海外取引と国内取引を別システムで管理すると、売上と売上原価が異なるシステムで算出されてしまい、粗利管理が困難になるので注意が必要です。

また、為替の扱いについてですが、通常は、あらかじめ決められた社内為替レートで売上や仕入を計上し、円貨で粗利を把握します。当然、入金や支払時の決済レートは、社内レートとは異なってくるため、別途、為替差損益という形で把握できるようになっているかどうかが、基本的な確認ポイントになります。さらに、為替予約を行っているケースで、税務上の処理方針(原則主義もしくは振当処理)にどこまで対応できているかも確認しておくべきでしょう。

運用面で考慮すべきことは?

企業規模や想定している運用形態によって様々な考慮事項があります。例えば、中堅商社の場合で、貿易部門や事業会社向けに貿易システムの導入を検討されている場合は、承認管理やユーザー権限管理などの内部統制機能と与信管理機能が重要な判断材料になります。また、企業規模が大きくなると、部門や商品の階層化を自社にフィットした形で設定できるかどうか、予実管理ができるか、債権債務の為替評価替えや在庫の低価法評価替えに対応しているかどうかなどもチェックすべきポイントです。

また、海外拠点の新設にともなって検討されている場合では、多言語対応はもちろんですが、貿易システムの基準通貨を現地の会計通貨に変更できるかどうかも確認しておく必要があります。さらに、事業規模の拡大にともなって、システムの入替えが発生する可能性もありますし、海外拠点でのITサポートが難しいことなどから、クラウド形式の貿易システムでスモールスタートし、2-3年後に再度システムの有効性について検証されることをお勧めしています。

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